帰宅したら坊ちゃんが正座して待っていた(現パロ)

※ツイッターのお題「帰宅したら坊ちゃんが正座して待っていた」から発想した小話です


「悪かった」
「は?」
「これまでの僕の態度を反省する」
「なにを言っているんです?」
「……お前が浮気するなんて!」
 坊ちゃんはぐわっと立ち上がり、セバスチャンの胸ぐらを掴んだ。
「僕が、お前の、その……夜の相手をしないから、お前は、お前は……こんなっ」
 わなわなと指を震わせながら、一枚のチェキをセバスチャンの前に突きつけた。
 そこには、流行りのアイシャドウでまぶたを真っ青に染め、強力マスカラでカッチカチに固めたつけまつげをつけ、くらくらするような真っ赤なルージュで唇を塗りたくった……
スキンヘッドの髭面の男が、満面の笑顔で写っていた。
 さらに。
「ミカエリスちゃん♡ また一緒に過ごしましょうね♡ うふん」
 とルージュで書いたメッセージ。
 ご丁寧なことに、うふんの横に巨大なキスマークまで押されている。
「坊ちゃん……、これは」
「いい、言い訳はいい。僕が冷たくしたばかりに、お前はこんな男と……っ。すべて僕が悪かった。今日からは……」
 セバスチャンはハッと気づいた。その写真は、おとといの飲み会で、たまたま横に座った女装好きの同僚が冗談で(いや本気だったかもしれないが)、セバスチャンのスーツのポケットに無理やりねじ込んだものだった。昨日うっかり捨てるのを忘れてしまっていたのだ。
 だが。
 いま、そんなことを言う必要はない。
 心の中でこっそりほくそ笑んだ。
 この状況を利用すれば、坊ちゃんと素敵な夜を過ごせるかもしれない。
 澄ました顔で先を促した。
「坊ちゃん、今日からは?」
「今日からは……」
 真っ赤になりながら、坊ちゃんはセバスチャンの耳元でごにょごにょとささやいた。
 思わずニヤリと笑みをこぼしたセバスチャンは、さっそくお姫さま抱っこで、坊ちゃんを寝室に運び、たっぷりと素敵な夜の時間を堪能したのである。

おわり