貴方は私を


書きたいところだけ書いた作品です 2025.12.12




 セバスチャンは僕が突き出した写真を一瞥すると、くしゃりと手の中で乱暴に潰した。ぐっと僕に迫ると、壁に片手をつき、身をかがめて顔を近づける。

「これがなにか?」

「なにか……って、お前、僕に隠れてこんな女と……!」

 その写真は偶然、写真部の友人が撮ったものだった。

『ファントムハイヴ、君んちの兄さん、隅に置けないね!』

 そういって渡された一枚の写真。

 場末の裏路地でセバスチャンが知らない女とキスしてる。

 周囲が暗すぎたのか、粒子が粗く、ピンクや黄色のネオンの灯りがぼやけている。それが尚更、いやらしさを煽った。

 どうやってその写真を友人の手からもぎとったのか覚えていない。   

 頭の中が熱くて、腹の中はもっと熱くて、ただただ怒りにまみれて家まで走った。おかえりなさい、といつものように穏やかな笑顔で迎えた彼に、写真を突きつけたのだ。

「ガールフレンドとキスするのに、いちいち貴方の許可がいるとは知りませんでした」

 冷ややかな眼差しが僕を突き刺す。

「だ、って、お前は、僕の……」

「貴方の、なんです?」

「ッ、もういいっ!」

 知るか、こんなやつ!

 好きにすればいいだろ!

 からだをよじって、セバスチャンの腕の中から逃れようとすると、ぐいと肩を掴まれて、無理やり壁に押さえつけられる。

「私と貴方はどういう関係なのです? 血の繋がっていない兄弟? それとも同居人?それとも……嗚呼、もしかして恋人とでも思っていましたか?」

 セバスチャンの嘲るような声が覆いかぶさってくる。

「貴方が私をどう思っているのか、一度も聞いたことはありませんよ」

「どう思ってるかだって?! そんなこと知ってるだろっ、いまさら聞くなバカ!」

 くそっと怒鳴った。頰が熱い。

 なんで僕がこんなことを言わなきゃならないんだ。

「んっ!」

 突然からだを抱きしめられた。

 セバスチャンの顔が間近に迫る。額をこつっと僕の額に押し当てて、

「ねえ……、貴方は私をどう思っているんです……」

 切なげに訊かれて、ドキッと心臓が跳ね上がった。