途中までです。いつか終わりまで書けたらいいな 2025.12.12
やっと見つけたのに、それがもう自分のものでないことを知ったときの気持ちって、わかる?
それは腹の底がカッと焼けるような、いや凍えるような気持ちだ。喜びと怒り。焦りと不安。それらが入り混じって身体中に蔓延し、心臓がぎゅっと縮まって全身がガクガクと震えてくる。
僕がずっと探していたもの。
それが今、目の前にいる。
美しい女の腕をとって、パティスリーでスイーツを選んでいる。スイーツなんて、昔あいつはどんなに凝ったものでもあっという間に自分で作って見せたのに、いまではショップで買うなんて! なんたることかと思うけれど、こうやって道端に立って、店の窓を覗き込んでいる僕は無力だ。
まあいい。
あいつが外に出てきたら、すっと前に立って、僕の姿を見せてやる。
あいつは驚きもせず、目を細めて、にっこりと口元を緩ませるだろう。それから「おや、坊ちゃん。こんなところにいらしたんですか?」なんてしらじらしいことを言って、こんなに永いこと、僕のそばを離れたことなど忘れたように、しれっとした態度でその場を切り抜けようとするだろう。
そんなことさせるもんか!
僕をひとりにしたことの詫びをさせるさ。たっぷりとな。
僕はショップの扉の前に立ち、あとからあとから出入りするレディたちに押されながら、踏ん張っていた。
ようやく、あいつと女はスイーツを選び、それを綺麗な箱に入れてもらっている。
さあ、もうすぐ来るぞ。
僕は息を荒くして、彼らが来るのを待ち構えていた。
チリンとベルが鳴ってショップの扉が開き、いよいよ彼らが出てくる。すかさず、僕は前に回った。
「おい!」
逃げた犬を叱りつけた。
「…………?」
返ってきたのは、けげんそうな顔。
「おい、なにをぼんやりしているんだ! 主人の顔を忘れたのか!?」
「なぁに、この子」
「さあ、なんでしょうねえ、いきなり」
奴は顎に指を添えて、僕をじっと見ている。
「なにをとぼけている! お前、さっさとその女から離れろ!」
「あの……なにか、お間違えでは?」
「はあ? わからないのか? この大馬鹿者!」
セバスチャンと女はふたりして顔をしかめた。その仕草もタイミングよく一緒で苦々しい。
「……失礼にもほどがありますよ。初対面の子どもにそんなことを言われる筋合いはありません」
セバスチャンは冷たく言い放つと、「さあ、行きましょう」と女の腰に手を添えて、歩き出した。
「お、おい、待て! セバスチャン!」
ふたりの背中に呼びかける。と。セバスチャンの足が止まり、ゆっくりと振り返った。
──僕のことを思い出したんだな! そら見ろ、この犬め!
「見知らぬ貴方がなぜ私の名前を知っているのです?」
「え……、だって」
「まあ、いいでしょう。貴方のような人とは二度と会いたくありません。軽々しく、人の名前を呼ばないでください。迷惑です」
眉をひそめて、きっぱりと言うと、女と共に去って行ってしまった。
次第に遠くなるふたりを呆然として見ている……場合じゃない!
あとをつけて、あいつの居所をつきとめなくては!