ちょっと一服 2017

140字SSまとめ





『黒の日』
「坊ちゃん……」
抱きしめて、唇を重ねて、足を絡ませて。
声を枯らして、求め合って、貪って…。
なにもかも忘れて、愛し合いたい。
最期はもう近いのだから──。



『七夕』
「シエルー、麦茶、持ってってください」
「う、ん」
「シエル?」
「……」
「なにしているんです?」
「コースター、つくってる」
「?」
「ドクターに折り紙、教わったんだ」
 出来上がった金色の星の形のコースターを敷いて、天の川を見ながら、ふたりで麦茶を飲む。あれが彦星、あれが織姫とセバスチャンが指差すと、シエルの表情が曇った。
「年に一度しか会えないなんて、寂しすぎるよ。毎日一緒にいたって、ときどき寂しくなるのに」
「寂しがり屋の誰かさんの傍は、絶対に離れませんよ。だから、安心して……」
「ん……」
 長い指が顎を掬う。重ねられた唇は温かくて優しかった。


『悪魔の日』
永遠の呪縛に囚われたお前に、この魂はやれないけれど、望むならくちづけてやろう。抱きしめて、その黒髪を撫でてやろう。それで餓えは満たされないだろうが、愛ならいくらでもくれてやる。白薔薇の褥の上で、僕を抱け。